2008年1月6日日曜日

ウエダ再興記⑲~ 文具業界の常識とウエダの意識

どの問題も絡みあっているので実際は同時に進めていったのですが、ここではできるだけ一つ一つ書いていきます。

創業の文具卸はその事業自体ではこの時点でも7年程赤字であり、この時期にはロイヤリティー収入のある本社に入ってからも二年程赤字という状態でした。

他業界から入った私からすると文具業界というのは、不思議な事だらけでした。
まず、ウエダは卸で、文具屋さんは小売というのですが、小売と言っても実際の売上を上げているのは納品というスタイルで、企業などに毎日出入りして注文を聞き、それを届けるというものであり、私からするとこのスタイルも卸じゃないの?と思いました。

そうであるにも関わらずメーカー、卸、小売という区分けが強く存在し、卸であるウエダは企業に直接出入りするだけでも小売である文具屋さんからバッシングを受け、取引停止など突き上げを受けるという事がまかり通っていました。

文具屋さんの間でも縄張りがしっかり存在していて、”あそこはうちの客だ”という意識があり、どこの企業というだけで出入りしている文具屋さんも、競争がなく決まっている状態でした。
しかし、”あそこはうちの客”と売り手側で勝手に言っているだけで、買い手側は全くそんな意識を持っていないケースがほとんどでした。
そんな中アスクルというものが登場したのですから、”何という事をするんだ”と文具屋さんの間では大騒ぎになっていたのです。

私は育ったのが、全くの自由競争である繊維業界であり、しかも再興記でも書いた瀧定という、大変厳しい会社でしたので、アスクルの展開など至極当たり前で、何故皆が文句を言っているのかが分からなく、むしろ滑稽にさえ感じました。
アスクルというのは、今まで文具屋さんが毎日出入りしていた先に、カタログを届け、運送で商品が届くというスタイルで、一応文具屋さんはアスクルに登録すると、飛ばされる事はないのですが、納品というスタイルがなくなり、顧客との接点がなくなるので正に危機、そんな仕組みを作ったプラスというメーカーは、とんでもない悪者だという事でした。

私も社内や業界内で、”文具業界の常識は一切知りません、あくまで一般ビジネスの常識で展開していきます”と言い続けていましたので、文具屋さんの中でも、完全に”悪者”でした。

社内では時代遅れのオフコンが使われており、単価が何十円の物が多い文具という商品で、2億円もの在庫があるわけですから合う筈もなく、数十万円位の在庫が合わないのは、誤差の範囲内という部長の説明でした。
又オフコンで管理している在庫は合っていない事が多いので、10個を切ると結局電話を受けた女子社員は、倉庫に在庫を確認しに行ってから、お客さんに返事をするという、何の為のソフトであり、コンピューター?という笑えない話であり、経理でも現金出納ですら合っていないという、皆が全く何の意識も持っていない末期的状況でした。

この状況から脱却していく為には、ウエダの強みを作っていく事、1円でも合わない事は駄目、挨拶など基本的な事を何でもきっちり行うという意識を植えつける事から始めていかなくてはなりませんでした。

しかし、業界自体は衰退に向かっており、そこに向けてオフコンからパソコンの仕組みに入れ替えるなど多大な投資をしていくのは無駄に終るので、これらと並行して卸部門の合併を模索していく事を決意しました。

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